どうも、スタイリストの大田垣です。
今日は色々とお客様に感化されることがあったので、熱が冷めないうちに思い思いを打ち明けてみようと思います。
人が何かを感じるのは、何らかの引き鉄になっていることがあるはずです。
仕事もそう。何でこの仕事なのかとか、もしくは、こういうことをしたいからこの仕事を選んだ、とか。
僕は美容師になりたい気持ちはあったけど、美容師じゃないといけなかったかといえば、そうでもない気もします。
とにかく、引き鉄のように「人の人生に何らかの影響を与えられる人」になりたかった。
中学生ながらにそんな大層なことを考えていたかといえば、
意外と考えていた気もする。
青年海外協力隊になりたい。
教師になりたい。
外国人に日本語を教える教師になりたい。
心理カウンセラーになりたい。
美容師になりたい。
今までにいくつもの「なりたい」がある中で、「成したい」だけはブレていなかったんだと思う。
「どんな美容師になりたいか」ってのを、新人が入るたびに上司が彼らに問い掛けるのを耳にしますが、
「かっこいい美容師」だとか、「No.1の美容師」だとか。
僕も毎回考えるのですが、そんなイケイケな答えって微塵も出なくて、
「コンプレックスを受け入れて、自分をちょっと好きになれる美容師」
って「あ、ふーん…」って言われそうな、くそ真面目な答えに毎回なります。
かっこよくもなりたいけど、僕の中でのかっこいいって、ズバッと相手を助けられるヒーローみたいな存在じゃなくて、
ボロボロになっても相手に手を差し伸べる泥臭い存在です。
僕がなりたいのは、学校内のクラスのカーストで、イケイケな部類に属して、キラキラして周囲にチヤホヤされる存在じゃなくて、
休憩時間に突っ伏して寝ていたり、2人1組でいつもあぶれてしまう人付き合いが苦手な人にも、
気付いて、偏見を持たず、何食わぬ顔で話しかけて、周囲にどんな目で見られようが、
興味を持って平等に接し、手を取れる存在です。
美容師におけるかっこいいは、
自分嫌いの誰かが、僕と繋がることで、自分に自信を持てたり、好きになろうと努力したり、励まし、高めあえる。
結果、この人生も、決して良くはないけど嫌いじゃないなって思える。
そんな風に思わせる関係作りができる、思慮深く、情深い人だと考えます。僕はね。
ということで、今朝、お客様から連絡があり、
「今日の予約は時間に余裕がないのでキャンセルしたいのですが、大田垣さんにお会いして、したい話があるので、行くだけ行って良いですか?」と。
僕の中でそのお客様は、とても秘密主義な方で、地元も知らず、「広島よりかは寒い所です♪」みたいな。
で、その方がご来店して、開口一番、「〇〇から通ってました(笑)」と。
〇〇から通っていた事実よりも、秘匿してきたことをいきなりカミングアウトされた事のほうがびっくりしました(笑)
その後も色々カミングアウトをされながら、「どうしたどうした?」と僕も混乱しましたが、
なんだかその方は、良い意味で何かに吹っ切れたようで、とても良い顔をされていたので「まぁ、いいか」と。
どうやら、「自分は変わっている」という想いと、幼少の記憶で、
「自分は駄目なんだ」「自分は人に迷惑をかけてしまう。」という自責に駆られ、
人と深く関わりを持つことに恐怖心があり、
人と触れ合うことも避けてきたらしい。
だから、美容師においても、特定の担当を決めることができなかったが、
かれこれ3~4年は担当させていただいています。
この方にとって、これはかつて無い奇跡だそうで、自分でも驚いているそうで。
何がそうさせたのかは僕には分かりませんが、
僕はその方を「変わっている」とは思ったけど、大概、僕もおかしいので、
仲間意識をもって接していただけです。
ただその中で、僕はその方の変わった部分も、全て肯定してきただけ。
その変わった部分を失うのは、全くもって魅力的ではないな、と思っただけ。
来るたびにパワーを貰えたらしく、
自分を受け入れられるようになったらしく、
挑戦したいことができたと。
発達障害を持つ人への支援、
自分のように社会に馴染めない人への支援。
大田垣さんが自分に影響したように、
私も誰かの背中を押せる人になりたい。と。
そんな大層なことはしていないけど、僕は
「頼んでないけど、生まれてしまった以上、幸せになりたくない人間なんていない」
と考えていて、
人を傷付けても、貶めても、殺しても、
それはどっかでエラーが起きただけで、
「可能であれば幸せになりたかった」んだと思う。
そんな人たちも本当は救えることもあると考える。(救えない人もいる)
ましてや、マイノリティってだけで、
人と変わっているってだけで、
他人に対して無害なら、
誰がその幸せの権利を剥奪できようか。と思う。
世間が受け入れなければ、マイノリティ同士で受け入れあうしかない。
そうするには、右へ倣え的な日本というコミュニティーは特に狭すぎるが、
外からでも理解を示そうと歩み寄れる人が何人かいれば、開ける風穴もあると思う。
僕はその方が抱えるマイノリティをただただマルッと受け入れただけ。
動いてみれば、心を開いてみれば、意外と大丈夫ってことは多い。
今後も仕事を通じて、誰かの人生の引き鉄になれたら、と心から思います。
その人が人生を終える瞬間、申し訳程度で良いから、自分の名前を思い出してくれたらどんなに嬉しいか。
そんなことを思えた一日でした。
今日が、美容師人生で一番報われた日かもしれない。